どんな小さなビジネスも、1人だけでは成立しません。従業員はもちろんのこと、顧客や株主、金融機関など、多くの関係者とのかかわりの中で企業は成長していくものです。もしあなたがこれから事業をはじめようとするなら、できるだけ多くの関係者に、その事業のすばらしさを伝えて、共感してもらうことが必要です。
そのためのツールが「事業計画書」です。「事業計画書」をつくることで、起業する人の頭の中だけにある想いや、目指したいことがより明確に意識できます。また同時に、その事業に関わってもらいたいパートナー達にそれを伝えることができるのです。
魅力的な「事業計画書」に必要なこと
会計事務所を主宰し、多くの起業家や経営者の相談を受ける税理士の原尚美さんは、著書『51の質問に答えるだけですぐできる「事業計画書」のつくり方』のなかで、誰が見てもわかりやすく魅力的な事業計画書の条件として、次の3つのポイントをあげています。
①なぜその事業がうまくいくのかのロジックがはっきりしている
②その事業にかける起業家の情熱があふれている
③その人がその事業を行わなければならない必然性が明確に伝わる
(「はじめに」より)
つまり、事業計画書は、ただ事務的につくればいいというわけではないのです。出資者やビジネス・パートナーを熱い気持ちにさせる情熱が表現されていなければ、いい計画書とはいえません。
そんな魅力的な計画書はどうすればつくれるのでしょうか。原さんは、まずは「事業コンセプト」を明確にすることが必要、といいます。それはいわば事業をスタートするときの想い。「なぜ私がその事業をやるのか!」というメッセージなのです。そのまとめ方のポイントを、先に挙げた原さんの著書を参考にしながら見ていきましょう。
事業コンセプトの決め方…ミッションとターゲット
事業コンセプトをつくる目的は、(中略)会社内外の関係者に、その事業に共感してもらうことです。したがってできるだけ簡潔で、誰もが同じイメージを持てるようなメッセージでなければなりません。(23ページより)
原さんは、コンセプトをわかりやすくまとめるために、まず自分自身に、次のような問いかけをすることをすすめています。
・自分が実現したい理想の世の中はどんな社会か
・人生で、一番大切にしているものは何か
・人生で、一番失いたくないものは何か
このような問いかけをすることで、自分が社会の中で果たすべき役割(ミッション)を意識することができます。そのうえで、次の質問に答えてみましょう。
“質問1 あなたが喜ばせたい人は誰か”
その事業によって、誰が、どんな喜びを感じることができるのか。自分の役割を、具体的な1人の顧客の喜びに落とし込みます。そうすることによって、事業の社会的意義と、顧客ターゲットが明確になります。次に、この質問にも答えてみましょう。
“質問2 なぜ、その人は喜んでくれるのか”
ターゲットの思考回路や行動パターンを理解していなければ、ただの独りよがりになってしまいます。自社の商品やサービスが、ターゲットにどのような価値(メリット)をもたらすのか、想像力を働かせてみましょう。次のように考えてみるのもいいかも知れません。
彼(彼女)は、現在何に対して「不便」を感じているのかを考えるのも効果的です。不便以外にも不満、不快、不都合、不足、不幸、不信、不健康、不当、不毛、その他「不」の付く言葉を思い浮かべます。(26-27ページより)
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