人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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映画「海難1890」に主演する怱那汐里の名字

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2015/03/16 13:46

今年12月公開予定の日本とトルコの合作映画「海難1890」。両国の友好を描いたこの映画の舞台は、1890年の和歌山県串本沖。暴風雨の中で座礁したオスマン帝国の軍艦のエルトゥールル号の乗組員を、地元民が献身的な救助活動で69人の命を救った。

日本ではあまり知られていないこの事実はトルコでは語り継がれ、1985年のイラン・イラク戦争では、テヘランに残された日本人215人の脱出にトルコ共和国は尽力した。

この2つの物語を描く映画に主演するのが、俳優内野聖陽と怱那汐里である。怱那はオーストラリアからの帰国子女。そのため、日本での出身地はわからないが、この「怱那」というちょっと読みづらい珍しい名字から、そのルーツは分かりやすい。

愛媛県の松山沖の瀬戸内海に点在するいくつかの島々は、合わせて怱那諸島と呼ばれ、中世にはここを本拠地とする豪族怱那氏がいた。一族のルーツには諸説あるが、平安時代に藤原氏の一族という親賢が忽那島に流され、のちに忽那氏の祖となったと伝えられている。

怱那氏は中世には水軍として活躍、伊予の戦国大名河野氏の重臣として戦国時代まで続いた。

現在でも「怱那」は愛媛県の松山市付近に集中しており、この一族の末裔と考えられる。
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