人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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御手洗さんのルーツ

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2014/10/06 10:04

伊勢神宮の御手洗

御手洗(みたらい)、という名字をみたことがある人は多いと思う。

この「御手洗」、現代では「おてあらい」と読んでトイレをさすことから、「御手洗」さんのルーツはトイレにある、と思っている人が多い。しかし、実は御手洗さんのルーツは神社にある。御手洗は、本来は「みたらし」と読み、「日本国語大辞典」には「神仏を拝む前に、参拝者が手を清め、口をすすぐための場所」とある。

伊勢神宮では、内宮の近くを流れる五十鈴川の河原が御手洗で、参拝者はここで手を清めて参拝した。こうした御手洗を兼ねた川は、御手洗川と呼ばれた。近くにこうした川のない鹿島神宮や香取神宮では、御手洗は池となっており、境内に御手洗池がある。

鹿島神宮の御手洗池
鹿島神宮の御手洗池

こうした御手洗は全国各地にあり、地名となったところも多い。なかでも瀬戸内海に浮かぶ大崎下島の御手洗は、江戸時代に西廻り航路が発達したことで重要な湊となり、やがて中継貿易の拠点として栄えた。

また、九州や伊予の大名は参勤交代の際に瀬戸内海航路を使うことが多く、この御手洗湊を利用する大名も多数あった。そのため、現在でも御手洗という名字は大分県を中心に、九州東岸や愛媛県・山口県などに集中している。

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