人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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田面選手と大累選手

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2012/10/29 10:02

25日にプロ野球のドラフト会議が行われ、昨年より2人少ない70人が指名された(育成除く)。この中でユニークな名字の選手が2人いた。阪神が3位で指名した田面功二郎と、巨人2位指名の大累進である。

田面という名字は意外と多い。一番多いのが群馬県の桐生市・みどり市で、次いで岩手県と青森県の県境付近。その他では、神奈川県の横須賀市付近とや徳島県北島町にもある。

ただし、読み方は違っており、一番多い群馬県では「たなぼ」と読むのに対し、岩手・青森では「たおもて」で、神奈川と徳島では「たづら」。今回指名された田面選手はみどり市の旧大間々町の出身なので、読み方は「たなぼ」。

「たおもて」と「たづら」は、漢字の読み方のままだからわかりやすいが「たなぼ」は難読だ。前橋市の旧粕川村には「田面」と書いて「たなぼ」と読む地名があることからここがルーツの名字だろう。水面を「みなも」というように、水田の表面を「たなも」と読み、それが「たなぼ」に変化したのでは、と考えている。

一方の大累選手は札幌の出身だが、「大累」という名字は宮城県加美町の名字。北海道に住んでいる人は東北からの移住者が多く、大累選手のルーツもここだろう。

「累」は「重ねる」という意味で「累々」という熟語以外にはあまりみない漢字だ。実は、加美町とは県境を挟んで接している山形県尾花沢町には「大類」という名字が集中している。

「大類」は武蔵国入間郡大類(埼玉県入間郡毛呂山町大類)をルーツとする名字で、「大累」はこの「大類」から変化したものだと思われる。
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