人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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世界遺産となる小笠原諸島の由来

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2011/05/09 10:44

7日、ユネスコの諮問機関が小笠原諸島を世界遺産の自然遺産に登録するよう要請したというニュースが流れた。太平洋中の孤島のため、東洋のガラパゴスといわれるほど、固有の生物が多いことで知られる。国内の自然遺産としては、白神山地(青森・秋田)や屋久島(鹿児島)、知床(北海道)に続く4件目となる。

さて、小笠原諸島の名前の由来の由来をご存じだろうか。小笠原諸島の小笠原は実は名字に由来している。そして、その名字のルーツは山梨県南アルプス市にある小さな地名である。つまり、地名→名字→地名と転じたものだ。

中世、今の山梨県には甲斐源氏といわる清和源氏の一族が広がっていた。彼らは地名を名字としたため、小笠原に住んだ一族は小笠原氏を名乗った。

小笠原氏はその後大きく発展をとげ、信濃で戦国大名となった他、陸奥、遠江、三河、京都、石見、阿波、土佐などに一族を出している。そして、今でもこれらの地方では小笠原姓が多いが、その他の地域では少なく、独特の分布をしている名字である。信濃小笠原氏は江戸時代には大名となっている。

幕末、日本と米国の間で小笠原諸島の領有問題が発生した。この時、幕府は16世紀末に小笠原一族の貞頼が発見した島で、昔から小笠原島と呼ばれている、と主張した。米国建国よりはるか前の主張に米国側は領有を断念し、以後日本領となったという経緯がある。

しかし、この貞頼という人物、実在はしたものの小笠原の発見については伝承の域に過ぎないとされる。

幕府の強引ともいえる主張によって日本は貴重な領海を持つことになったわけだが、一般に弱腰とされる日本の外交も、実は幕府の官僚たちは意外としたたかだったことがわかる。

なお、小笠原の世界遺産は、6月下旬にパリで開かれるユネスコの会議で正式決定される見込み。
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