人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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岩崎家と地下浪人

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2010/01/12 10:01

前回は坂本龍馬の家系を紹介したが、大河ドラマ「龍馬伝」にはもう一人の主役がいる。それは、同じく土佐出身で三菱の創業者岩崎弥太郎である。

坂本家は、江戸中期に土佐藩郷士の株を取得した家だったが、岩崎家は逆に郷士の株を売却して、一ランク下の地下浪人という身分の出身である。

地下浪人というのは土佐藩独特の身分。一応、苗字帯刀が許されて武士としての格式はあるものの、藩からの家禄はなく、農民と同じく村で農業などをして生計を立てていた。岩崎家ももとは土佐藩の郷士で、弥太郎の祖父の代に郷士株を売って地下浪人となっていたものだ。

土佐は、関ヶ原合戦で国守の長宗我部家が敗れ、かわりに遠江掛川から山内一豊が大抜擢を受けて藩主となって入封した。そして、山内家の家臣が土佐藩の上士となり、長宗我部氏に仕えていた地元の武士達は郷士となったのだ。

そのため、郷士は土地代々の旧家の子孫が多く、根本的に、新参者である上士に対する反感が高かった。その一方、旧家の子孫で士分であることから、郷士株を売って地下浪人となっても農民に対しては特権意識を持っていたとされる。

岩崎家の先祖も長宗我部氏に仕えた武士。武田信玄の出た甲斐源氏武田氏の一族で、名字のルーツは甲斐国山梨郡岩崎村(山梨県)であると伝えている。この信憑性はともかく、「旧家」意識のよりどころとはなってたいたと想像できる。
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