人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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俳優の森繁久弥が死去

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2009/11/16 09:59

10日、俳優の森繁久弥が亡くなった。

ところで、「森繁」という名字は珍しい。聞き慣れているためあまり珍しくは感じないが、実際には「稀少」といっていもいい程度しかないはずだ。

森繁久弥本人は、旗本の流れを汲む菅沼家の生まれで、母方の祖父にあたる森繁家を継いだ。

「森繁」姓は、全国におそらく100世帯ほどしかなく、しかもその大半は、山口県の下松市から岡山市にかけての瀬戸内海沿岸に集中している。圧倒的に多いのは山口県で、ここにルーツがあるのはあきらか。実際、森繁家のルーツは、山口市に合併した瀬戸内海沿いの町、旧秋穂町にあるといわれる。

「もりしげ」と読む名字にはいろいろあるが一番多いのが「森重」で、全国順位だと二〇〇〇位付近。山口県ではベスト一〇〇の少し下あたりにランクインしているが、それ以外の県では珍しい。山口県内でも宇部市以東の瀬戸内海側に多く、「森繁」の分布と重なっている。

おそらく、古くからこの付近(旧周防国)に広がる森重一族があり、そのうちの一族が分家した際に「森繁」と漢字を変えたものだろう。こうした漢字の変化は、各地で一般的に行われており、これが日本人の名字の数が飛躍的に増えた理由の一つなのだ。
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