人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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福岡国際マラソンと香椎宮

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2007/12/03 09:17

2日の福岡国際マラソンはケニアのワンジル選手が大会新記録で優勝した。この選手、ケニア国籍だが母国での選手歴はほとんどない。というのも、本格的な練習を始める前に仙台育英高にスカウトされて来日したからだ。現在も日本で駅伝を続けている。

日本人トップは佐藤敦之選手。2時間7分台の自己最高記録を出し北京五輪に一歩近づいた。しかし、ここ十年ほどは、日本のマラソン界は女子が圧倒的に強く、男子は世界レベルでの活躍が少ない。それでも、今回の佐藤選手が7分台を出したように、記録自体は大きく伸びている。その理由の一つはコースの変更であろう。

かつて、福岡国際マラソンは雁ノ巣折り返しで、海ノ中道といわれる陸繋砂州(本土と島を繋ぐ砂浜)を走っていた。しかし、このコースでは海風の影響が強く、いいタイムが出ないことも多かった。そこで、2度にわたるコース変更で現在の香椎折り返しとなったものだ。

かつての海ノ中道も、先端には金印の出た志賀島があるという歴史のあるところだったが、現在の折り返し地点である香椎も、古代からの由緒ある地名である。

神話に登場するヤマトタケルノミコトの子である第14代仲哀天皇が九州の熊襲討伐に赴いた時、この地で急死した。そこで柩を椎の木にかけていたところ、異香を放ったことから、「香椎」という地名ができたという言い伝えがある。仲哀天皇は九州で亡くなった珍しい天皇で、しかも死後は天皇不在のまま神功皇后が70年近くも政務をとったという不思議な時代でもある。そのため、この時期は日本古代史における王朝交代の時期にあたる、とも考えられている。

ところで、香椎には仲哀天皇や神功皇后を祭る香椎宮もあるが、なぜか近くのJR九州香椎線の駅名は「香椎神宮」駅となっている。JRの駅はかつて“国有鉄道”だったことから、駅名については地元の意向を無視したような一方的な命名も多い。東京でも、品川駅が港区に、目黒駅が品川区にある他、四谷の駅を「四ツ谷」とするなど、独善的な命名も多い。しかし、旧官幣大社でもあり、天皇を祭る重要な神社の名称を変更しているのはかなり大胆といえる。
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