人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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建国記念日と天皇家の故郷

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2007/02/13 09:47

2月11日は建国記念日だった。なぜ、この日が建国記念日かというと、初代天皇の神武天皇が即位したのが、この日だからだ。では、一体いつの話かというと、日本書紀に従えば紀元前660年ということになる。時代でいえば弥生時代の中ごろあたり(かつては縄文時代とされていたが、近年弥生時代が繰り上がった)。もちろん、現在この年号を信じている人はおらず、日本書紀の記述に従って単純計算すれば、ということである。

さて、神武天皇という名前はあとからつけた謚号(おくりな)である。もともとは違う名前があった。というのも、漢字が日本に来たのは5〜6世紀頃。従って、それ以前には漢字はなく、人名も「やまと言葉」で構成されていたからだ。

神武天皇のやまと言葉にによる名前は「カムヤマトイワレヒコ」。「カム」は「神」で「神の子孫」という意味であろう。「ヤマト」は「大和」で今の奈良県。「ヒコ」は「男性」の意味。では、残った「イワレ」は何かというと、実は、奈良県にあった地名である。今ではなくなっているが、桜井市中部から橿原市の東南部あたりにかけての地域とみられ、桜井市には磐余山という山もある。このあたりが、天皇家の故郷ということになる。

つまり、神武天皇とは神様の子孫が九州からやってきて、大和の磐余の地に住んで支配者となったという意味の名前を持っているのだ。わざわざ「イワレ」という狭い地域名を背負っていることから、当時の勢力範囲はその周囲に過ぎなかったことが伺える。

ちなみに、磐余の地には、かつて桜井村・阿部村・香具山村という3つの村があった。このうち、阿部村とは「安倍」姓のルーツの地でもある。安倍首相の出た安倍一族と天皇家は、その草創期から接点があったはずだ。
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