人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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夏の甲子園が開幕

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2006/08/08 15:06

 8月6日、第88回の夏の甲子園大会が開幕した。全国47都道府県から49校が参加して高校日本一を争う。学校数が極端に多い北海道と東京は2代表だが、その他の県は参加校数に関係なく1府県1校。大阪や神奈川のように、参加校数が多くかつ強豪揃いの県でも、参加30校にもみたない鳥取や福井でも同じ1代表には賛否両論あるが、それも都道府県制をとる以上はやむを得ないだろう。

 さて、開幕試合では、昭和時代に大活躍した高知商業と、春夏通じて初出場の北海道の白樺学園高が対戦した。平成になって以降、高知県の代表は野球留学生が大半を占める明徳義塾高がほぼ独占してきた。名門高知商業も今大会は春夏通じて実に9年振りの甲子園で、久しぶりに地元出身選手が甲子園で活躍している。その様子はメンバー表からも類推できる。

 高知商のエースは中平選手。「中平」という名字は高知県に圧倒的に多く、全国の中平姓の約三分の一は高知県にある。とくに県西部の幡多地方が中心で、ここから四国山脈の尾根を越えた愛媛県の南予地方にかけて多い。中平選手も県境に近い旧十和村(現四万十町)の出身。初戦で好リリーフをみせた小松投手は県東部の出身。高知県東部は全国でも有数の小松姓の密集地として有名。「小松殿」といわれた平重盛の末裔という伝承があり、安芸市では小松が圧倒的に多い最多姓である。

 大会第1号ホームランを打った筒井選手の「筒井」という名字は東海から四国にかけて広く分布しているが、密度的には高知県がダントツ。県北部の山岳地帯には筒井順慶の一族という筒井一族が広がり、旧吾北村(現いの町)では一番多い名字が筒井だった。筒井選手の出身は、いの町。この他、「片岡」「溝渕」「戸梶」など、メンバー表をみただたけで高知県チームなのがよくわかる。高知県出身の筆者にとっては、いずれも同級生にあった名字ばかり。

 ちなみに、両チームを通じて一番珍しい名字は、白樺学園高でリリーフした4番打者の大竹口選手。北海道に多い名字で、帯広市と足寄町に集中している。白樺学園高は帯広市近郊にあり、やはり同校ならではの名字といえる。
 地方出身者は選手の名字を見るだけで、懐かしさや親近感を感じることができる。これも高校野球ならではの楽しみの一つである。
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