日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。
交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。
2006/07/31 10:57
以前このブログで、「六月一日(うりはり)」という名字は実在しない、と書いた。こういう日付にちなむインチキ名字はたくさんあるのだが、実は「八月一日」という名字は実在する。
「八月一日」姓は「八月朔日」と書くことも多く、ともに北関東の名字。「八月一日」が群馬県を中心に分布するのに対し、「八月朔日」は茨城県のつくば市付近に多い。
この名字は、旧暦の八月一日(現在の九月上旬)に稲の穂を摘んで神様に供え、来たるべき台風シーズンを無事乗り切って豊作となるように祈る神事に由来する。そのため、「八月一日」と書いて「穂摘み=ほずみ」と読む。
「ほずみ」というと、普通は「穂積」という名字をイメージする。関東と東北南部に多い名字で、特に福島県白河市付近では、地域を代表する名字の一つである。では、この名字の由来はなんだろうか。
今では稲を刈る際には、根元に使い所から刈り取り、一定量を束ねて乾燥させる。しかし、古代の稲刈りでは稲の穂の部分だけを収穫した。弥生時代の石器としてよく紹介される石製の包丁も、稲の穂を刈るために使われたものだ。
こうして収穫した穂の部分を、乾燥させるために積み上げたものが、「穂積」である。「佐藤」とともに日本を代表する名字である「鈴木」という名字も、この「穂積」に対する紀伊半島の方言がルーツといわれている。
難読の名字は、同音の別の名字から漢字が変化してできたものが多いが「八月一(朔)日」さんの場合は、「穂積」から変化したものよりも、神事に関係した一族の末裔が多いのではないだろうか。