人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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源氏発祥の地

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2010/04/12 09:11

2週続けてテレビ番組の紹介をしたため遅くなったが、今回もセンバツの時期に合わせて関西に行ってきた。

今回訪れたのは、JR福知山線の川西池田駅。2つの地名をつなげた駅名は各地にあるが、川西は兵庫県、池田は大阪府の市の名前で、2府県にまたがる地名を冠した駅名は珍しい。ただ、実際には福知山線は府県境の猪名川の西岸を走っており、川西池田駅も府県境からはかなりはなれている。

さて、この駅には、ロータリーに「源氏之祖 源満仲公」という銅像がある。



「源氏之祖 源満仲公」の銅像


源氏には、始祖となる天皇によって、清和源氏、村上源氏、嵯峨源氏など、20種類近くの流れがある。このうち最も栄えたのが清和天皇の子孫の清和源氏で、源頼朝や武田信玄、足利尊氏、新田義貞などはみな清和源氏の末裔。

この清和源氏、各地に広がったが、系図上では摂津源氏といわれる一族が直系にあたる。というのも、清和源氏の祖源経基の長男満仲の子孫だからだ。

この摂津源氏が本拠地としたのが摂津国多田荘で、今の川西市付近であることから、ここが源氏発祥の地ともいわれ、駅前には源満仲の像が建てられているのだ。また、摂津源氏の嫡流は多田に住んだことから、やがて「多田」を名字とし、「平家物語」にも多田行綱などの武将が登場している。

多田一族はその後没落して、清和源氏嫡流の地位を失ったが、現在でも、香川・徳島両県から、関西にかけては「多田」姓が多い。
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