人名・地名 おもしろ雑学

日本で一番多い名字は佐藤で、2番目が鈴木といわれています。しかし、「本当?」と思っている人も多いのではないでしょうか。東京の周辺に住んでいる人は違和感がないでしょうが、関西の人だと、一二を争うのは山本と田中だろう、と思っています。

交通が便利になって、東京からだと、離島や山中を除いてほとんどの所に日帰りできるようになりました。でも、日本は狭いようで、まだ地域差は残っています。そんな日本を名字や地名からみつめ直してみたいと思っています。

著者プロフィール

森岡 浩(もりおか・ひろし)

姓氏研究家・野球史研究家。1961年高知市生まれ。土佐高校を経て早稲田大学政治経済学部卒。学生時代から独学で姓氏研究を始め、文献だけにとらわれない実証的な研究を続けている。一方、高校野球を中心とした野球史研究家としても著名で、知られざる地方球史の発掘・紹介につとめているほか、全国各地の有料施設で用いられる入場券の“半券”コレクターとしても活動している。

現在はNHK「日本人のおなまえっ!」解説レギュラーとして出演するほか、『名字の地図』『高校野球がまるごとわかる事典』(いずれも小社刊)、『名字の謎』(新潮社)、『日本名字家系大事典』(東京堂出版)など著書多数。

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春日の由来

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2006/04/17 13:41

 桜もすっかり葉桜になって、暖かくなってきたと思ったら、この土日は急激に冷え込んだ。北国では雪になったところもあるようで、また冬に逆戻りである。
 これからは本格的な春の訪れになりそうなので、今回は春にちなんだ名字についてみてみよう。
 春のつく名字というのは意外に少ない。一般的にみられるものは、愛知や鹿児島に多い「春田」、関東の「春山」、関西の「春名」くらいではないだろうか。
 「はる」という音を含まないものも含めると、実は「春」のつく名字で一番多いのは「春日」である。この名字、誰でも「かすが」と読めるが、よく考えてみるとかなりの難読である。なぜこれで「かすが」と読むのだろうか。
 春日姓の由来は奈良の春日大社にある。春日大社は、710年の奈良遷都の際、藤原不比等が、藤原氏の氏神をまつったのが起源。日本を代表する神社の一つで、春日姓はここから出て全国に広がった。現在でも春日という名字は神社関係の家に多い。
 では、春日神社はなぜ「かすが」と読むのかというと、これは枕詞がルーツである。枕詞とは、和歌を詠むときに特定の言葉につける修辞法(かざり言葉)で、このあたりの地名の「かすが」を詠む際には、「春日(はるひ)のかすが」といった。そのため、「春日」という漢字そのものを、「かすが」と読むようになったものだ。「飛鳥」とかいて「あすか」と読むのも、「あすか」の地の枕詞が「飛ぶ鳥の」だったことに由来している。
 さらに、「かすが」という地名そのものもルーツはなにか、というと、諸説あるようだが、「神(か)」の「住(す)」む「処(が)」という説が有力。ようするに、神の住んでいる場所で、神社のあるべき場所なのだろう。
 さて、「春日」を「かすが」と読むことが一般に広く知られるようになると、これを「春=かす」、「日=が」と分解して考える人が出てきた。三重県北部には「天春」と書いて「あまかす」と読む名字がある。「あまかす」という名字は「甘粕」か「甘糟」と書くのが普通。この一族のうちの誰かが、「かす」の部分に「春」という漢字をあてたものだ。
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